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環境・エネルギー
2018/05/30

リモートセンシング技術で都市の水と緑を解析、「生態系の恵み」の見える化の実現へ

  • 未来都市

グリーンインフラにはアメリカの「雨水を管理するための緑地空間」としての考え方と、ヨーロッパの「緑の多面的な機能を活かした土地利用」という考え方の、二つの流れがあります。この両方の考えを取り入れながらグリーンインフラの研究に取り組んでいるのが、環境学部 環境創生学科の横田樹広准教授です。都市の緑地を地域レベルで捉え、まちづくりに生態系を立体的に組み込んでデザインしていく取り組みはどんなものなのかお話を伺いました。

横田樹広准教授

「リモートセンシング技術を使って、雨と緑の関係の解析をしています」

グリーンインフラに重要なのは雨水対策ですが、降った雨と緑の役割を情報化する為には広範囲のモニタリング技術が必要です。これに対して私は、人工衛星やドローンなどのリモートセンシング技術を使って緑地環境の解析をしています。水の集まり方だけではなく、雨が染み込む場所、そこでできる植生など、降った雨と緑の関係の解析がテーマのひとつです。水循環の中で緑地がどこに対してどういう位置にあり、どういう役割を果たせるのかを“見える化”していこうと考えています。

例えば、写真を複数重ねて3Dモデルを作るという技術があります。広い領域全体を捉えられる人工衛星の衛星写真から高さデータを取りだし、その情報から地区全体の土地の形状や地表の情報をセットで分析して、土地被覆の情報化ができるようになりました。これらを利用して、街の中に作られた下水システムに入る手前にある緑の配置を分析することで、どういった場所が一時的に水の浸透性を高めたり、水を溜めておくことができるのかを研究しています。

横田樹広准教授

「人々の望む緑地の質が生態系とどう両立できるかが重要」

横浜市の若葉台団地や港北ニュータウンなどの団地の緑、都市の雨水排水施設である雨水調整池、さらにはタイの大都市近郊の水田環境などを研究の対象としています。現在の都市では、降った雨は多くが手つかずのまま排水され、川の水はいち早く海に流されているため、かつてのため池のように人も生き物も使える水のたまり場所が限られます。一方で、古くからある市街地内の池が「かい掘り」で復活するように、都市の中にも水とセットになった緑を多く残すことで、生態系の豊かさを再生することができます。都市につくられた緑地の活用として、浸透性や遊水機能を高めて水の涵養や調整をしながら、生態系としても豊かな空間を作ることが、これからの雨水対策においての課題ですね。

横田樹広准教授

団地などのように人の生活と近い緑地空間では、雨水対策において緑にどういう役割があるのか、それが地域の生態系とどのように関連しているのかを、住民の方に理解していただくことが重要です。例えば、雨が降ると植栽区画ごとにどう水条件が変わるのか…。植えられている植物の種類や階層も関係してきますし、土壌の構造も関係します。庭のような外構空間を、雨を浸透させながら植栽も楽しめるように両立できないか、情報を整備し特徴付けることが必要です。「雨がこう入ってくるので、この基盤でこういう植栽をつくって、全体としてこのような景観と生態系を目指すことが効果的ですよ」という提案ができるようになるのが目標ですね。最終的には、地区の雨の集水や浸透、そこで人々が望む緑の活用方法や景観、そこに生き続けられる生き物達、をそれぞれ情報化して、一体的な街の緑のデザインに活用していくことを考えています。

我々は、こういった緑地空間づくりのプロセスを、団地の居住者の方と一緒に考えたりしています。地元の人たちの緑の質へのニーズもいろいろあるので、満足の要因、不満足の要因を洗い出して将来どういう形でグリーンインフラを作っていくかということを共に考えているところです。

「緑がもつ機能をスコアリングし、生態系の恵みの見える化を目指す」

今後の高齢化や人口の変動に伴い、緑地の管理と活用がソーシャルな課題です。緑のもつ様々な機能と、それがもたらしてくれる社会的な価値をどう“見える化”していくかというところを研究しています。
居住者や世代に応じて緑に期待する機能はさまざまだと思いますし、水が大事だという人もいれば、生態系が大事だという人もいると思います。まずは、生態系の恵みをもたらす水と緑の情報と、その恵みを享受する人々の情報をセットで集めて、緑づくりに対する将来のシナリオを一緒に作っていくことに取り組んでいます。“社会的で機能の高い緑づくり” やその活かし方を想定した、「持続可能な緑づくりのプロセス」を地域の方々と一緒につくっていくということを、団地をモデルに考えているところです。

横田樹広准教授の研究

また世田谷区の大学間連携として、『世田谷グリーンインフラ研究会』をやっています。この中で、区民が住宅地や庭の緑を雨水対策に利用できるかを診断するスコアリングツールができないかと考えています。スコアリングによる緑の質の“見える化”とそれを用いたまちづくりは、海外ではすでに実現しているので、目安にしながら考えていけないかと。世田谷にもこういう意識の高い方々がたくさんいらっしゃるので、そういった方々のお知恵なども借りながら取り組んでいくテーマだと思っています。

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