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「暮らし方の綾」パンフレット

環境・エネルギー
2026/02/28

未来のライフスタイルは、日常の中にある

環境学部 / 総合研究所 教授古川 柳蔵
  • ライフスタイルデザイン
  • ネイチャー・テクノロジー
  • 持続可能なライフスタイル
  • 環境イノベーション

地球温暖化と環境破壊は、現在の人類社会が直面する最も深刻な課題の一つである。化石燃料の使用によって二酸化炭素が増加し、世界各地で気候変動による異常気象が発生しているほか、森林伐採や海洋汚染は生態系に深刻な影響を与えている。技術の革新に伴い、環境負荷が少ない製品やサービスも社会には多く存在するが、持続可能な社会を実現するためには、我々の暮らし方、すなわちライフスタイルを見つめ直し、エネルギーの使い方や環境への負荷を減らすことが必要だ。環境の制約を前提とする社会において、新しいライフスタイル創造のために研究を続けるのが、環境学部の古川 柳蔵教授である。

古川教授は、新しいライフスタイルに変革することをライフスタイルイノベーションと表現し、その方法の研究を多方面から推進する。まずは「バックキャスト思考」だ。今の延長線上の未来を想像するのではなく、これから起こるとされている、さまざまな制約を受け入れた上で、未来のありたい姿をデザインする。そのありたい姿を実現させるには、どのような問題が起こるのかを特定し、その問題を解決する手法を検討する。未来のありたい姿から逆算して考えることによって、現在とるべき行動を考えるものだ。「未来のありたい姿、ありたいライフスタイルをまずは先にデザインしましょう、というのがバックキャスト思考を使った手法研究です。企業や自治体、そして一般の住民と一緒に未来を考える活動もやっています。」

自身の研究について説明する古川教授。
自身の研究について説明する古川教授。

自然界が持つ低環境負荷な技術や構造を人間の世界に応用する研究も推進している。例えば、オニヤンマの羽根にはギザギザの部分があり、ここに空気の渦ができ風が流れやすくなることで強い揚力を発生させるが、この羽根を応用した風車を作ると、わずかな風でも回転をはじめ、風力発電ができるようになる。また、アリ塚を真似たタイルを製作し、それを用いると湿度変化が少ない快適な空間ができる。これはアリ塚の土壁の表面には、小さい穴がたくさんあいており自動的に水分を吸収、排出するためである。「自然界は石油とか資源を使わないで生きているわけですよね。その方法を人間界で応用すれば、より持続可能な暮らしができるのではないかと考えています。たくさんの生き物たちが持つ構造を応用して、新しいライフスタイルに変革するという概念を、ネイチャー・テクノロジーと呼んでいます。」

古川教授が17年間にわたって続けている大規模な調査研究が「90歳ヒアリング」である。戦前の暮らしを経験した90歳前後の高齢者に聞き取りを行い、これからの持続可能なライフスタイルの手がかりを抽出する研究だ。これまで17年以上にわたり全国各地で600人以上にヒアリングを実施し、食や資源の使い方、地域との関係、自然との関わり方など、多様な生活の知恵を収集してきた。実施にあたっては、自治体や知人の紹介など信頼のあるルートから対象者につながり、自宅で2時間程度、暮らしの実態を丁寧に聞く。自宅であればアルバムや生活の痕跡もあり、家族が襖の向こうで耳を傾けることも多い。こうした場が、本人の記憶を呼び起こし、時に寝たきりの人が起き上がるほど元気になることさえあったという。「戦前の暮らしには、未来の暮らしのヒントがあるのではないかと考えています。戦前はエネルギーをほとんど使っていません。資源も限られていて、あるもので何とかしているという自給自足が多い。そのようなライフスタイルは、実はこれから来る未来に受ける制約とほぼ一緒なのです。元気な90 歳の共通点は、ポジティブ思考ではないかと思います。足りないなら、足りない中でできる楽しいことを探る姿勢ですね。」

「今もいいけど、昔も良かったと肯定する姿勢も、元気な90歳の秘訣になっているのかもしれませんね」と語る古川教授。
「今もいいけど、昔も良かったと肯定する姿勢も、元気な90歳の秘訣になっているのかもしれませんね」と語る古川教授。

こうしたライフスタイルの変革は、食の分野においても重要なテーマとなっている。古川教授は現在、国のプロジェクトの一環として、日本のフードシステムを持続可能なものへと転換する研究に参画しており、その中で消費者と生産者双方の行動変容を対象とした研究を進めている。特に重視しているのは、地域の食文化や郷土料理に宿る価値である。各地に伝わる郷土料理を記録し、映像として発信する取り組みも行っており、それは単なる料理の保存ではなく、その土地の自然環境や資源の使い方、暮らしの知恵そのものを次世代へ伝える試みでもある。「郷土料理には、自給自足をし、野菜の皮も捨てずに美味しく食べるなどの様々な価値観が料理のプロセスに入っています。料理動画をアップする他にも郷土料理のワークショップを開き、真似して郷土料理を作るだけでなく、自分好みにアレンジして楽しむよう促したり、賞味期限を知らせるグッズを作り、動画にリンクさせて、料理動画利用の日常化を促したりしています。 」

賞味期限が近い食材に貼るマスキングテープ「旬テープ」。
賞味期限が近い食材に貼るマスキングテープ「旬テープ」。

新しいライフスタイルの定着が今後の大きな課題であると古川教授は指摘する。我々は便利な生活に慣れており、理論や危機感だけでは行動は変わらない。そこで古川教授は、戦前のライフスタイルを馴染みやすい形で広める活動を行っている。90歳ヒアリングで得られた語りを体系的に整理し、書籍として出版することで、これまで記録されてこなかった戦前の日常生活の価値観を社会に提示している。また、ラジオ出演や落語、展示などのメディアを通じて、より多くの人々がその価値観に触れる機会を創出。さらに、それらの知恵や価値観を現代に根づかせるため、「暮らし方の綾」という取り組みを進めている。90歳の語りから抽出された暮らし方の美しさや価値観を、短い言葉や文様として表現し、デザインや製品、展示などを通じて社会に広める試みだ。文章や理論として伝えるだけでは届かない価値観も、美しさや共感を入口にすることで、人びとが自然と関心を持ち、自ら考える契機となる。この「暮らし方の綾」は、持続可能なライフスタイルをデザインの力によって社会に提示する試みとして高く評価され、IAUD国際デザイン賞2025 銅賞(サステイナブルデザイン部門)を受賞している。「私は昔の暮らしに戻りなさいと言っているのではありません。戦前のライフスタイルを知った上で、今の暮らしと比べ、自分で考え、自分で選択してほしいのです。本やメディア、暮らし方の綾を通じて伝えたいのは、そのためのきっかけです。人は強制されて変わるのではなく、自分で気づいたときに初めて変わる。新しいライフスタイルは、その気づきの積み重ねによって社会に定着していくのです。」

古川教授の研究室で行っている研究のイメージ。古川柳蔵研究室ウェブサイトから引用。
古川教授の研究室で行っている研究のイメージ。古川柳蔵研究室ウェブサイトから引用。

ライフスタイルの変化は大きな決断ではなく、日常の中の小さな体験から生まれることを示す具体的なエピソードを古川教授は語ってくれた。「仙台で研究に従事していたころ、バスで通勤していました。そのバスはよく30分くらい遅れるのです。最初は苛立ちを覚えていましたが、そのバスを待つ生活を続けているうちに、山の緑の移ろいや、あまり見かけない大きな鳥が飛んでいる姿などに気がつくようになりました。それまで無駄だと思っていた時間が、豊かな時間に変わってきたんですね。最終的には徒歩で通勤するようになりましたよ。最初からライフスタイルを変えようと思ったわけではありません。不便だと思っていたことの中に価値を見つけたとき、自然と自分の行動が変わったのです。」

「研究室に行くと猛烈に忙しくなるので、それまでの貴重な30分だと思えるようになりましたね。」と笑顔で語る古川教授。
「研究室に行くと猛烈に忙しくなるので、それまでの貴重な30分だと思えるようになりましたね。」と笑顔で語る古川教授。

これからを生きる私たちは、どのような視点を大切にしたら良いのだろうか。最後に尋ねた。「日本の日常生活は美しさを持っていると思います。普段慣れているからあまり気づかないのですが、改めて気づいてほしい。その美しさは世界に誇れるものだと思います。日常にもう一度目を向けてみてほしいです。」

未来に必要なライフスタイルは、新しく一から創り出すことではなく、日常の中にすでに存在している価値に気づき、自らの意思で選び直すことなのかもしれない。古川教授の様々な研究は、過去の知恵を単なる記録として残すのではなく、未来を形づくるための選択肢として提示する試みである。ライフスタイルは与えられるものではなく、気づきの中から選び取るもの。未来の持続可能な社会は、遠い理想の中にあるのではなく、私たちが日常をどう見つめ直すか、そのまなざしの先ですでに始まっている。

古川 柳蔵FURUKAWA Ryuzo
古川 柳蔵のプロフィール画像

環境学部 環境経営システム学科、大学院 環境情報学研究科教授。総合研究所 サステナビリティ学連携研究センター センター長。2005年、東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了、博士(工学)取得。民間シンクタンク、東北大学大学院環境科学研究科准教授を経て、2018年より現職。

APPENDIX追加資料

・researchmap(古川 柳蔵)
・東京都市大学環境学部 古川柳蔵研究室
・暮らし方の綾(note)
・アスカジ

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