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環境・エネルギー
2020/01/30

「都市大らしいグリーンインフラ」とは何か

  • 未来都市

これまで行なわれてきたハードウェア主体のグレーインフラから、今後は緑地を中心としたグリーンインフラの活用が期待されています。東京都市大学では未来都市研究機構のグリーンインフラマネジメントユニットをはじめ、環境改善や減災・防災、健康増進など多岐にわたる視点で緑地空間の機能を明らかにし、その成果を都市環境に還元する具体的な方法について研究が進められています。

この度、環境領域が専門の7人の先生方が一堂に会し、現在進められている東京都市大学におけるグリーンインフラユニットマネジメント研究について、意見交換会を開催。その内容を4回に分けて掲載します。

最後となる第4回では、未来都市へグリーンインフラを社会応用していくプロセス、そして東京都市大学らしいグリーンインフラ研究のあり方を探りました。

東京都市大学:対談プロフェッショナル
<ファシリテーター>
飯島健太郎 教授(環境学部・総合研究所・グリーンインフラマネジメントユニット長)
<コメンテーター>
横田樹広 准教授(環境学部・総合研究所・グリーンインフラマネジメントユニット)
リジャルH.B. 教授(環境学部・グリーンインフラマネジメントユニット)
吉田真史 教授(知識工学部・グリーンインフラマネジメントユニット)
福田達哉 教授(知識工学部・グリーンインフラマネジメントユニット)
堀川朗彦 客員研究員(ランドスケープアーキテクト・総合研究所)
山﨑正代 客員研究員(ランドスケープアーキテクト・総合研究所)

グリーンインフラの実現のため、横断的な取り組みを

飯島教授
みなさんの研究をご披露いただいたのですが、これらを踏まえて、未来都市へグリーンインフラを社会応用していくプロセスについてお考えをうかがいたいです。また、それぞれのご研究が独立しているわけではなく、効果や扱うべき方向性などいろんな形で重なりあうのではと感じています。ぜひそのあたりもお聞かせいただけたらと思います。

横田准教授
やはりグリーンインフラは横断的に取り組まないと実現しないと考えています。土地である以上資産であるし、所有、管理する制度、社会での経済的な意味合いもある。それを考えれば、ひとりが何かをやればいいという話ではありません。SDGsもありますが、地域課題をどう捉えていくかだと思います。地域の中でなにかしらの機能が自律的に高まっていく、そのために何に対してどんなことを重点的に行なっていくか。たとえば地域の生態系であったり、地域の環境課題であったり、そういうものに即して行なっていくというのが理想ではないかと。そして様々な方々が特定の課題に対して連携をすることが必要です。

横田樹広

地域の中で生態系に対するコミュニケーションがどこまでできるのか

私は緑を介した水循環を研究していますが、これまで行政が管理してきた河川環境に民間がどのように関われるのか、市民がどう河川を活用できるのか、という問題がありますし、逆に民地の機能を公的に高めるというのがどの程度までできるのかという課題もあります。調整環境や浸透環境を整備していく時に、地域の中で生態系に対するコミュニケーションがどこまでできるのかを考えていくのが大事かと思っています。

等々力渓谷は、フォレストセラピーが実現できる場

吉田教授
等々力渓谷もまさにそういう状況にあって、世田谷区、東京都、国土交通省、すべてに話を通さなきゃいけない。プランを出してもどこかの段階でストップがかかってしまう。行政だけではなく、民間も含めてプロジェクト、コンソーシアムなど上手な枠組みがあるといいなと、横田先生のお話を聞いて思いました。

福田教授
等々力渓谷は、都市の中の自然という存在を活かして、フォレストセラピーが実現できる場所なのではと思っています。ヨーロッパなどに比べ、日本においては関心が低い分野ですが、そうした活動から自然と都市の共生が実現できると感じています。

福田達哉

山崎研究員
今後、コンパクトシティに向かっていく過程で、少しずつ空いてきた場所にグリーンインフラが入っていくだろうと予想されるので、それを見越して、今から何かできないかと期待しています。

外環道路をつくることで飛び地になる都市農地をつなぎ直す公園

堀川研究員
現在、三鷹市で取り組んでいるのは、外環道路をつくることで飛び地になる都市農地をつなぎ直す公園の設計です。対象には道路や民有地などがあり、行政などの調整が特に難しくなるケースですが、このプロジェクトでは、下水道、まちづくり、公園緑地、都市計画、健康福祉など、他職種の人が参加する「グリーンインフラチーム」を発足しました。公園というポジショニングですが、緑があり、遊び場があり、お年寄りが散歩するのに最適な250mの散策路がある。さらに農地の持っている浸透力についてきちん調べて効用があれば、局所で雨が降った場合に役立つのではないかと考えています。

堀川朗彦

リジャル教授
先ほどお話した明和地所との共同研究ですが、最初は調査に建物を使わせてほしいとこちらからお願いしたのがきっかけでした。「明和地所と東京都市大学が共同研究プロジェクトを発足:環境共生型マンションにおけるグリーンインフラマネジメントに関する研究」について明和地所と都市大がニュース・リリースを出したところ、私の予想以上に多くのメディアが取り上げて頂いており、建設関係も興味を持ってくださった。大学で行う基礎研究においても、グリーンカーテンを実践している企業との連携を積極的に行なうことが、社会に広めていくために重要だと思いました。特に、グリーンカーテンは最小単位のグリーンインフラであり、建物や街全体で普及すれば、温熱環境を緩和するだけではなく、きれいな街並みも形成される。

地域ごとに自然活用の将来像を描いていくのがランドスケープの役割

飯島教授
今回の会のまとめとして、「都市大らしいグリーンインフラ」とは何かを発信したいのですが、全体を示すキーワードはやはり「ランドスケープ」ではないでしょうか?

飯島健太郎

横田准教授
今回のみなさんのお話で「調整」という言葉が何度か出てきましたが、「調整」こそが、都市において我々が失ってきた機能ではないかと思うんですね。これまでのインフラは永続性、安定性、長期性が重視されてきましたが、グリーンインフラは180度違う形で行っていくものだろうと。暫定性、ダイナミズム、トータルにうまくやりくりする、というところだと感じています。水循環という視点でも、余った上水を環境用水として使ったり、渋谷でも再生された水が活用されたりしています。少しずつですがグレーインフラに調整力が組み込まれてきている。であれば我々はグリーンの立場からそれをより加速させていくのが、なすべきことだと思います。模索を繰り返し、手応えをつかみながら、地域ごとに自然活用の将来像を描いていくのがランドスケープの役割じゃないでしょうか。

東京都市大学が業際的な研究環境を持っているのは実にユニーク

山崎研究員
グリーンインフラには様々な概念や論説があって、まだまだ変わっていく概念だと思います。いろいろな階層、切り口から見て意見交換できるユニットはとても興味深いですよね。世界の研究現場では業際的な研究がありますが、日本では数少なく、東京都市大がこうした環境を持っているのは実にユニークです。とても楽しい時間でした。さらに拡大し、エンジニア、生活、観光分野など都市大が持っている研究分野を、グリーンインフラという切り口でソートかけるとおもしろいのではと感じていました。

堀川研究員
幅広い議論でしたが、興味深く聞かせていただきました。ありがとうございます。このようにグリーンインフラユニットのみなさんとそれぞれの考えを表現しあい、違う分野から意見を投げかけることで、研究を違う角度から見ることができ、価値観を変えたり広げたりできるのではないかと感じました。今後もぜひとも私たちにはない知見を与えていただきたいし、私たちがやっていることでよければお伝えしたい。そうすることで活性化を図っていきましょう。

グリーンインフラがグレーインフラと違うのは、自然だということ

飯島教授
「幅広い」というところに東京都市大の良し悪しがある。バラバラでは悪しきものになってしまいますが、しっかり統合体系化すれば良いものになると考えています。それぞれの深さだけで研究活動をしている大学は多いですが、都市大は全体をとらえながら計画論を重視している。横浜、川崎、世田谷と様々な応用の場を持ち、しっかりと社会実装の着地点を見据えながら、グリーンインフラ研究を行なっている大学ですよね。

横田先生もおっしゃっていたように、グリーンインフラがグレーインフラと違うのは、自然だということ。生物学者の福岡伸一先生のいうところの「動的平衡」のように、変化していくものをマネジメントしながら自然を守りそして活用し、人の健康、経済、防災といった様々な視点で土地利用を図るという総合的な学問に挑んでいるということですね。今日は重要なキーワードを与えていただきました。お忙しい中、本日はありがとうございました。

グリーンインフラユニット

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