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ライフサイエンス
2022/07/29

研究を可視化し、未来のライフシーンを問う。これからのヒューマン・センタード・デザインとは?(前編)

  • 未来都市

東京都市大学では“未来都市研究の都市大”をコンセプトに掲げ、各領域で都市研究を重ねてきました。2020年度から2021年度まで研究分野として、「ヒューマン・センタード・デザイン研究ユニット」が発足。本記事ではユニット長 都市生活学部 西山敏樹准教授、研究プロジェクトに協働したキワ・アート・アンド・デザイン株式会社の平賀俊孝氏、根本正樹氏にこれまでの研究成果と今後の展望についてお話を伺いました。(後編の記事はこちら)

西山敏樹氏、平賀俊孝氏、根本正樹氏

(写真左から)平賀俊孝氏、西山敏樹准教授、根本正樹氏

コロナ禍によるリモートワークで生じた課題の解決に向けて

西山准教授:「ヒューマンセンタード・デザイン」とは、人間の行動特性や心理を考慮したデザインのことです。人間中心設計とも呼ばれていて、ここ10年くらいで特に注目され始めています。

このユニットではパンデミックや働き方改革を視野に入れた、未来都市での最適な在宅ワーク環境を研究してきました。住居はもちろん、環境の特性、ウイルス対策、人間の心理的要因を総合的に捉え、SDGs を見据えた在宅ワーク環境を提案しています。

西山 敏樹

2020年に、郊外都市に住む824人を対象としたコロナ禍での働き方に関するアンケート調査を行ったところ、自宅でのテレワークが難しいことが判明しました。集中して仕事ができる場所がなかったり、子どもからの干渉があったりと、様々なトラブルが浮き彫りとなったのです。中には台所や階段、子どもの勉強机で仕事をしているという人もいました。
これらの結果から見出せたのが、未来都市に必要なのは柔軟性あるオフィスということです。つまり固定ではく可変なオフィス。この概念を世に広めたく、かねてよりご縁のあったキワ・アート・アンド・デザインさんと共に「動くオフィス」のプロジェクトを進めるに至りました。キワさんは街づくりとモビリティの両方を長年研究され、さらに都市生活にフィットした事業も手がけられていたことから最良のパートナーと考え、お声がけさせていただきました。

人間の特性やニーズを反映させたプロダクト

西山准教授:上記のアンケート調査で明らかとなった人間特性やニーズを可視化するため、2つのプロダクトを作りました。その一つが家庭用在宅ワークブース「BOOTH」です。

BOOTH

部屋の角に設置し、その中で仕事を行うことを想定しています。内側にはパソコンを置けるテーブルが付いていて、さらに電源もとれます。音が遮断される材質を使っているので、より集中できるのも特徴です。

アンケート回答者の中には、仕事を行いつつも子どもに目を届けたいという方も目立ちました。そこで、透明な窓を組み込むことで、仕事しながら周りの家族とのコミュニケーションを図れるようなスタイルとなっています。

可変というキーワードを落とし込むべく、キャスターを付け、自宅の様々な場所で使えるようにしました。また、各パーツは分割できるので、普通のテーブルとしても活用できるうえ、搬入性、収納性も高いと言えます。

もう一つが、移動型ワークスペース「Think Tank」です。現在シェアオフィスやテレワークボックスなど、数多くの働く空間が登場していますが、それらは可変性があるとは言えません。「Think Tank」は未来における柔軟な働き方の提案がデザインの根底にあり、どこにいても自分だけのパーソナル空間で過ごせることを示唆しています。ワーケーションでの活用も想定していて、例えば、キャンプ場に運んで、仕事をする時に使えばオンとオフの切り替えもしやすいでしょう。

最大の特徴は、働く空間としての機能だけでなく、パンデミックや災害など、社会インフラの一部としての活用を考慮していることです。あるいは子どもの勉強部屋や遊び場にもできます。アンケート調査では在宅勤務中に仮眠をとったり、趣味を行う人が多いことがわかりましたが、このプライベート空間があれば、仕事の合間のリフレッシュもしやすいでしょう。

この2つのプロダクトを世に出すことで、未来都市の生活の概念を問い、賛同を得られるかどうかも研究の焦点ですね。そこから改良点などを抜き出して、試行錯誤していくのも今後の課題となります。

研究を形にし、社会にインパクトを与える

平賀俊孝氏:当社は自動車やプロダクトデザイン、ブランド設立などを展開するデザインコンサルティング会社です。モノだけではなく“体験”をつくり、どのようなユーザーの価値が生まれるかということも重視しています。

平賀俊孝

「BOOTH」は日本の家庭のフローリングや家具に馴染みやすいように黄色を採用しました。とはいえ、製品化が目的というわけではなく、あくまでも研究です。未来における働き方の提案を体現させたプロダクトという位置付けになります。今後は多くの人に実際に使用してもらいながら、フィードバックをもとに調整を重ねていく予定です。

大学での研究は一般的に目に触れにくいもの。多くの人に知ってもらうためには、研究をプロダクトとして世に出し、社会にインパクトを与えることが大事なのではないかと思います。その中間のコミュニケーションを「BOOTH」や「Think Tank」が担っていると言えるはずです。研究を可視化し、世に問うことが大学や研究機関に求められるフェーズに来ていると考えます。

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