TCUinnovaのロゴ
  • menu
  • search
  • info
  • email
東京都市大学「TCUinnova」
  • ライフサイエンス
  • 環境・エネルギー
  • 製造技術
  • 材料
  • デバイス・装置
  • 機械
  • 建築・土木
  • 情報・通信
  • 計測・分析
  • 基礎研究
  • トピックス
  • info_outlineこのサイトについて
  • mail_outlineお問い合わせ
  • EN
  • JP

金属の試験片に力を負荷させながら、高速で回転させる疲労試験機

機械
2026/03/09

金属疲労評価が明らかにする、材料の本当の強さ

理工学部 教授白木 尚人
  • 金属疲労
  • フラクトグラフィ
  • 欠陥
  • X線CT

日々の生活や様々な活動によって、私たちの心身は疲労を感じる。疲労の蓄積は病気や怪我の原因となるものだ。実は私たちの生活を支えるあらゆる構造物に使われる金属にも、疲労が生じるのはご存知だろうか。繰り返しかかる力によって静かに劣化し、表面に亀裂が現れた時には、すでに深刻な段階に達していることも多い。「金属疲労」と呼ばれるこの現象は、記憶に残る重大事故の原因として社会に甚大な被害をもたらしてきた。「この金属材料はどこまで安全か」「この傷は危険か、許容できるか」。そうした判断を科学的に支え、正確に評価する技術が、安心安全の土台と言える。見えない破壊のメカニズムを解明し、日本製造業の信頼を支えるのが、理工学部の白木 尚人教授だ。今回は白木研究室の出身であり、現在は高機能材料メーカーである株式会社プロテリアルに在籍し、研究室との共同研究を行う関 宏友氏にも同席いただき、白木教授の研究を産業の側面、そして卒業生の視点からも掘り下げる。

自身の研究を説明する白木教授
自身の研究を説明する白木教授。

白木教授は、実験によって金属疲労のメカニズムを解明し、材料の本当の強さを測る研究に取り組んでいる。硬さや強度といった特性を精緻なデータとして導き出し、設計や品質評価の根拠を金属メーカーなどに提供する材料評価を専門としている。研究の核心は「欠陥があること」と「危険であること」は同じではない、ということだ。亀裂がいつ発生し、どのくらいの速さで進行し、どの大きさになれば限界を迎えるのか。これらを明らかにすることで、本当に危険な状態と許容できる状態を科学的に区別する。「怖いのは内部から進展してくる亀裂です。表面に顔を出すまで見えない。見えた時にはもう非常に大きくなっている。だから日頃のメンテナンスと、正確な評価技術の両方が必要なのです。」

軸荷重疲労試験片で観察された鋳鉄中の欠陥
軸荷重疲労試験片で観察された鋳鉄中の欠陥。

白木研究室の出身である関氏は、鋼・セラミックス・銅線材など多様な高機能材料を手がける素材メーカーである株式会社プロテリアル(https://www.proterial.com)に在籍している。カミソリの刃のような薄板から10トンを超える大型製品まで、幅広い素材・規模の製品を手がけ、日本のものづくりを根底から支えている。なかでも特殊鋼の製造は同社の中核事業であり、自動車・航空機・電子デバイスなど幅広い産業に素材を供給している。関氏は同社で、15年にわたり特殊鋼の開発や品質評価に携わってきた。特殊鋼とは、鉄に様々な添加元素を加えたもの。例えば鉄にニッケルを入れると粘り強くなり、タングステンを入れると非常に硬くなる。白木教授によれば、人間でいうサプリメントのようなものだという。

株式会社プロテリアルの企業説明をする関氏。
株式会社プロテリアルの企業説明をする関氏。2010年、東京都市大学大学院工学研究科 博士前期課程機械工学専攻を修了。

白木研究室との共同研究を通じ、自社製品の長期的な強度特性の解明にも取り組む。「私たちから材料を提供し、それを先生の研究室で評価していただきます。新しい材料ができた時にその強度を評価したり、不具合が生じた時に、なぜそれが起きたのかを材料の観点から明らかにしてもらうイメージですね。緊急性の高いテーマは社内でも対応できますが、長い時間軸でじっくりと解明したいテーマこそ、大学と一緒に丁寧に取り組むべきだと思っています。」

「材料の寿命が延びれば、製造にかかるエネルギーを減らすことにもつながる。脱炭素社会への貢献という意味でも、この研究は重要だと考えています。」と語る関氏と、頷く白木教授。
「材料の寿命が延びれば、製造にかかるエネルギーを減らすことにもつながる。脱炭素社会への貢献という意味でも、この研究は重要だと考えています。」と語る関氏と、頷く白木教授。

こうした役割を担える研究者は、今や非常に少ない。特に白木教授が長年専門としてきた鋳物の疲労研究は、今では取り組んでいる人は多くない。研究を始めた頃は珍しくなかったというが、専門を細分化する流れの中でこの領域を続ける研究者が減り、気がつくと第一人者と呼ばれるようになっていたと語る。「金属疲労の研究者は全国にそれなりにいますが、鋳物の疲労となるともうほとんどいませんね。気がついたら,研究をしている人は数える程になっていた、という感じです。」

「金属疲労の研究を続けてもう数十年になりますね。」と語る白木教授。
「金属疲労の研究を続けてもう数十年になりますね。」と語る白木教授。

白木教授はもともと工業デザイナーを目指していたが、芸術系の学校への進学は思うようにならなかった。高校の先生から「デッサンや造形の技術を活かすなら機械か建築だ」と勧められ、機械の道へ進んだ。その後、1985年に起きた日本航空123便墜落事故が、研究者としての原点となる。痛ましい事故の原因が少しずつ解明されていく過程に強く引き込まれた。研究を続ける中で、忘れられない言葉をかけられたことがある。「日航ジャンボ機の墜落事故で肉親を亡くした方とお会いする機会がありました。その方から、“あなたのような研究者がいてくれるおかげで、叔母の死は無駄じゃなかったと思えます”、と言われました。直接、感謝の言葉をいただいたのは初めてで本当に感動しました。自分がやっていることは無駄ではないのだと、あらためて思えた瞬間でした。」

関氏自身は在学中、材料の表面コーティング評価を研究するとともに、中小企業との共同研究という実践的な経験を積んだ。企業から研究費をいただく立場として成果を出すことへの責任感、後輩への指導を含めたプロジェクト全体の管理。学生でありながら社会人に近い感覚で研究に向き合った時間だったという。「あの経験がなければ、社会人になってから苦労していたと思います。チームをまとめることにそれほど苦労しなかったのは、研究室時代のおかげだと感じています。白木先生はとても厳しかったですね。挨拶や整理整頓といった基本的な姿勢から、実験の細部に至るまで、妥協を許してくれない。適当にやるとものすごく怒られます。大学教授がわざわざ挨拶一つのことまで細かく指導するなんて、普通はしないですよ。でも先生は一人ひとりの人格を見ながら声をかけてくれる。なかなかできることではないと思います。」

関氏の発言に「私、なんだか大雑把に見えるらしいんですけどね。」と笑って答える白木教授。
関氏の発言に「私、なんだか大雑把に見えるらしいんですけどね。」と笑って答える白木教授。

白木教授が次に見据えるのは、二つの新たな挑戦だ。一つは靭性、すなわち粘り強さの評価技術の確立だ。ビスケットは硬くて強いが、ひびが入るとバキッと割れてしまう。カステラは柔らかいが、ひびが入ってもなかなか割れない。白木教授によれば金属に求められる強さには、このカステラのような粘り強さもあるという。強度や硬さの評価に比べ複雑だが、研究を進めることで材料における一通りの評価技術を確立したいと考えている。もう一つは金属粉末の積層材の強度・疲労評価への取り組みだ。金属積層技術は粉末を積み重ねて成形するため、従来の製法と比べて内部に微細な空洞が生じやすい。「微細な空洞が強度にどう影響するか、きちんと評価できれば、逆にそこを活かした設計も見えてくるでしょう。例えばそこにオイルを含ませてメンテナンスフリーにするとか、可能性は広がります。」

こうした研究の重要性は、日本のものづくりが直面する深刻な課題と切り離せない。かつて日本の製造業を支えた「品質の高さ」は今、新興国の急速な技術力向上とコスト競争の前に、その優位性を脅かされている。設備投資や人件費の差により、かつては日本にしか作れなかった素材が、より安いコストで海外製造できる時代になった。さらに深刻なのが、品質を支えるべき技術者や研究者の減少だ。正確な材料評価ができる人材は年々少なくなっている。正確に評価できる人間がいなければ、どれだけ優れた素材を作っても、その真の価値は証明できない。白木教授は自身の仕事をこう語る。「ダメなものはダメ、いいものはいいと正しく評価できる技術と人材を守ることが、日本のものづくりを守ることだと思っています。それが私にできる、最大の仕事です。言ってみれば、正義の味方のつもりでやっています。」

「研究は楽しくやらないとだめですね。孔子の言葉にあるじゃないですか。それを知る者はそれを好む者に如かず、それを好む者はそれを楽しむ者に如かず、って。まさしくあれです。」と語る白木教授と、隣でうなずく関氏。
「研究は楽しくやらないとだめですね。孔子の言葉にあるじゃないですか。それを知る者はそれを好む者に如かず、それを好む者はそれを楽しむ者に如かず、って。まさしくあれです。」と語る白木教授と、隣でうなずく関氏。

私たちの身の回りにある無数の構造物。それらが安全に機能し続けることは、決して偶然ではない。見えない亀裂の進展を科学の目で捉える人、その意味を正しく読み解き、技術開発を進める人がいるからこそ、私たちは安心して生活できる。白木教授の元には今日も学生が集まり、材料の本当の強さとは何かを問い続けながら、研究者として、技術者として、そして一人の人間としての強さを磨いている。

実験室での白木教授と関氏。
実験室での白木教授と関氏。
白木 尚人SHIRAKI Naoto
白木 尚人のプロフィール画像

理工学部 機械工学科、大学院総合理工学研究科 機械専攻 教授。1996年、武蔵工業大学(現 東京都市大学)工学研究科 機械工学博士課程修了、博士号取得(工学)。1997年、同大学助手、准教授を経て、2014年より現職。

APPENDIX追加資料

・researchmap(白木尚人)
・東京都市大学理工学部機械工学科機械材料研究室

RANDOMこちらの記事もどうぞ
トピックス
2019/04/20

未来都市と地域を活かした集客学

  • 未来都市
基礎研究
2025/06/21

重力波を読み解く力が、明日の社会を変える

デザイン・データ科学部 / 総合研究所 教授髙橋 弘毅
  • 教育への応用
  • オペレーションズ・リサーチ
  • 人工知能・機械学習を用いたデータ解析
  • 特徴抽出
環境・エネルギー
2021/01/16

グリーンインフラの使命 第2回「実証される緑地の力 ~鉄道空間のケース~」

  • 未来都市
基礎研究
2021/09/14

都市問題への解決策を探る:未来都市研究機構・都市マネジメント研究ユニットの狙いと展開 ユニット長・北見幸一准教授に聞く(後編)

  • 未来都市
トップ > 機械 > 金属疲労評価が明らかにする、材料の本当の強さ
  • ライフサイエンス
  • 環境・エネルギー
  • 製造技術
  • 材料
  • デバイス・装置
  • 機械
  • 建築・土木
  • 情報・通信
  • 計測・分析
  • 基礎研究
  • トピックス
  • このサイトについて
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • 東京都市大学
TCUinnovaのロゴ

東京都市大学リサーチ・ストーリーズ、TCUinnova(イノーバ)。
各分野のスペシャリストが都市で挑む、イノベーションの最前線をお伝えします。

arrow_circle_rightもっと見る
© 東京都市大学 Tokyo City University All Rights Reserved.